新興市場見通し:投資家心理改善で続伸か、値ごろ感も相場の追い風に、IPOは1社

■日米金融政策イベントは波乱なく通過

今週の新興市場は反発。米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利は2会合連続の据え置きとなり、今後の米経済指標を確認しつつ、利上げの必要性を慎重に見極める金融政策の姿勢が確認された。米FOMCのタカ派姿勢が和らいだとみられたところへ、弱めの米経済指標の発表が続いたため、金融引き締め長期化懸念は後退した。日本銀行も金融政策決定会合で長短金利操作の再修正を決定したが、微調整に留まったため、金融政策が早期に転換される懸念は縮小した。日米で金融引き締め観測が和らぎ、投資家がリスク選好を取り戻す方向に向かい始めたことが追い風となり、値ごろ感の強まっていた新興市場は大幅反発。今週の騰落率は、日経平均が+3.09%だったのに対し、東証グロース市場指数は+3.32%、マザーズ指数は+3.40%だった。

個別では、第三者割当増資の払い込み日を11月9日に迎えるアクアライン<6173>、同じく第三者割当増資の払い込み日を11月10日に迎えるDelta-Fly-Pharma<4598>、24年3月期業績予想を上方修正したミクリード<7687>などが週間騰落率値上がり上位に入った。その一方、酸素カプセルの製造・販売の開始見込みを発表したが、材料不足との見方から売られたアジャイルメディア・ネットワーク<6573>、23年12月期の営業利益予想を下方修正したアルー<7043>が週間騰落率値下がり上位となった。週間売買代金上位には前述のアクアライン、Delta-Fly-Pharmaに加えカバー<5253>、ジーエヌアイグループ<2160>などが並んだ。

■値ごろ感も追い風で続伸か、決算ラッシュピーク、IPOは1社

来週の新興市場は続伸か。今週末の10月雇用統計が弱めの内容だったことから、労働市場の軟化で米インフレ率の低下基調が期待され、米利上げ打ち止め見通しも台頭しつつある。今週末11月3日が祝日だった国内新興市場はこうした米国情勢を織り込む形で相場続伸が予想される。来週の米国では相場に大きな影響を及ぼしそうな経済指標の発表や材料が乏しい。東証マザーズ指数は年初来安値圏にあることで値ごろ感が強まっている。また、日米の金融引き締め観測が和らいだことを機に投資家がリスク選好を取り戻しつつあることが追い風となって続伸するだろう。なお、中東情勢については、イスラエル軍がイスラム勢力ハマスの一掃を目指した軍事行動を続けるとみられる。しかし、米欧をはじめとする世界各国が人質の解放や民間人の犠牲を最小限に抑えることをイスラエル軍に強く求める動きを続けており、イスラエル軍としてもそうした圧力を無視し続けることは難しいだろう。中東情勢が制御不能に陥り、原油価格が再び急騰するリスクは限定的とみられる。

来週は、決算ラッシュピークとなり新興市場でも多くの企業が決算発表となる。9日のカバー<5253>、10日Arent<5254>、イーディーピー<7794>、サンウェルズ<9229>、GENOVA<9341>、ispace<9348>などに注目したい。なお、6日より東証マザーズ指数は東証グロース250指数へ変更となる。また、来週の新規株式公開(IPO)は1社で、DAIWA CYCLE<5888>が東証グロースへ上場する。そのほか、バリュークリエーション<9238>が7日よりBB期間入り、Japan Eyewear Holdings<5589>は最短日程だと8日に公開価格が決定となる。

《FA》