米国株式市場見通し:PCEコアデフレーターや銀行ストレステストに注目

FRBが注視しているインフレ指標の個人消費支出(PCE)コアデフレーターに注目だ。パウエル議長は今週開催された2日間の議会公聴会でインフレ目標達成は長い道のりで、他の大方の政策当局者と同様に現状で年内2回の追加利上げが適切になるとの見解を明らかにし、相場の下落につながった。ボウマン理事は、コアインフレが22年の秋以降は横ばいにとどまっており、インフレ抑制のための追加利上げが必要だと主張。5月のPCEコアデフレーターの伸びも4月と同水準にとどまる見込みで、コアインフレに改善が見られなければ追加利上げが正当化され、相場の重しになりそうだ。一方、改善が見られた場合には、FRBの追加利上げ観測の後退で相場を押し上げることになるだろう。

また、FRBは28日に大手銀行を対象としたストレステストの結果を発表する予定で注目だ。パウエル議長は議会公聴会で大手銀の資本水準は依然強いとし、金融システムの柔軟性に自信を示した。一方、2008年の金融危機を受けた国際的な資本規制見直しの一環として、大手行は資本要件の約20%引き上げを課される可能性があることを明らかにしている。議長は資本要件の引き上げは金融安定化をもたらすが、融資能力を弱めると慎重な姿勢を示しており、引き続き銀行セクターの売り材料になりそうだ。イエレン財務長官も年内のさらなる銀行統合を予想しており、警戒材料だ。

3月初旬のいくつかの中堅銀の破綻を受けて、議員からの中規模銀に対する規制強化の圧力も強まった。連邦預金保険公社 (FDIC)総裁は中規模銀に対する自己資本要件の厳格化を支持。パウエル議長は商業不動産への懸念を表明しており、特に商業不動産のポ―トフォリオに傾斜している小規模銀を監視していることを明らかにした。利上げがまだ継続する可能性が高まるなか、新たな金融混乱は最悪のシナリオとなるためリスクを注視したい。ほか、6月最終週で四半期末に伴う調整色も強まりそうだ。

経済指標では、6月ダラス連銀製造業活動指数(26日)、5月耐久財受注速報値、4月FHFA住宅価格指数、4月S&P20都市住宅価格指数、5月新築住宅販売件数、6月消費者信頼感指数、6月リッチモンド連銀製造業指数(27日)、5月卸売在庫(28日)、1-3月期国内総生産(GDP)確定値、週次新規失業保険申請件数、5月中古住宅販売仮契約(29日)、5月個人所得・個人支出、PCEコアデフレーター、6月シカゴPMI、6月ミシガン大学消費者信頼感指数確定値(30日)、などが予定されている。

主要企業決算では、クルーズ船運営のカーニバル(26日)、ドラッグストア小売店運営のウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(27日)、食品会社のゼネラル・ミルズ、半導体メーカーのマイクロン・テクノロジー(28日)、スポーツ用品メーカーのナイキ、給与・人事関連アウトソーシングのペイチェックス、調味料メーカーのマコーミック、ドラッグストアチェーン運営のライトエイド(29日)、ビールなどの飲料会社のコンステレーション・ブランズ(30日)、などの発表が予定されている。

クルーズ船セクターはパンデミック来の需要回復で良好な決算が期待できそうだ。ナイキはアナリストがすでに2024年通期見通しを巡り悲観的な見解を示しているが、コスト高に加え、中国経済の回復の遅れなどが見通しにどう影響するかに注目だ。

(Horiko Capital Management LLC)

《FA》