為替週間見通し:ドルは伸び悩みか、引き続き日本の円買い介入を警戒

【今週の概況】
■欧米金融引き締め継続で円売り加速

今週のドル・円は堅調推移。中国人民銀行は6月20日、実質的な政策金利とされる1年物のローンプライムレートを引き下げたが、景気・住宅市場支援には不十分との見方が多く、中国成長見通しの下方修正が続き、リスク回避ムードが広がった。また、日本の財務相や経産相からの円安けん制発言もみられ、リスク回避の米ドル売り・円買いが一時強まった。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が21日と22日に開かれた上下両院の公聴会で証言し、2%のインフレ目標達成には長い道のりであること、緩やかな金融引き締めが必要との見解を改めて伝えたことから、年内2回の追加利上げを想定したドル買い・円売りが活発となった。スイス中央銀行と英中央銀行が追加利上げを発表したことも円売りにつながった。

23日のニューヨーク外為市場でドル・円は、142円72銭まで下落後、一時143円87銭まで上昇した。英国、ユーロ圏の経済指標が悪化し、リスク回避の円買いが一時優勢となったが、英国、ユーロ圏との比較で米国経済はまずまず良好との見方が浮上し、利上げ継続を期待した米ドル買い・円売りが活発となった。ドル・円は143円85銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:141円21銭-143円87銭。

【来週の見通し】
■ドルは伸び悩みか、引き続き日本の円買い介入を警戒

来週のドル・円は伸び悩みか。パウエルFRB議長は6月21、22日に開かれた公聴会で証言し、足元のインフレ率が物価目標を大きく上回っているため、緩やかながらも引き締め継続の必要性を強調。年内2回の追加利上げを示唆した。米国のインフレ高止まりで連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め長期化が想定され、ドルは売りづらい展開となる可能性がある。ただ、円安進行を受けて日本政府による為替介入に対する警戒感が高まっている。米バイデン政権は直近の為替報告書で日本を為替操作国の監視対象から除外した。米国は日本の為替介入を容認しているわけではないが、円安けん制を後押しする材料になりそうだ。

なお、FRBが金融政策策定の判断材料としているPCEコア価格指数の5月分は、クリーブランド連銀が算出するCPIナウによると、前年比+4.70%と、上昇率は4月実績と同水準となる見通し。予想を上回れば利上げ再開を想定したドル買いが強まりそうだが、金利上昇による景気後退(リセッション)も警戒されている。この状況下で欧米諸国の株式が下落した場合、リスク回避の円買いが強まりそうだ。

【米・6月消費者信頼感指数】(27日発表予定)
6月27日発表の米6月消費者信頼感指数は回復を示すか注目される。連邦準備制度理事会(FRB)の引き締め継続で景気への影響が警戒され、市場予想を下回った場合、株安・円高要因に。

【米・5月PCEコア価格指数)】(30日発表予定)
6月30日発表の米5月PCEコア価格指数は前年比+4.70%と、クリーブランド連銀のCPIナウは算出。予想を上回る堅調な内容なら、引き締めをにらんだドル買いに振れやすい。

予想レンジ:141円50銭-145円50銭

《FA》