S&P500 月例レポート ― ギャング・オブ・フォーが最高値更新を牽引 (1) ―

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●THE S&P 500 MARKET:2024年3月
個人的見解:年初来61営業日のうち22日で過去最高値を更新、年初来で10.16%上昇(配当込みのトータルリターンはプラス10.56%)。今年はここまでか?

そして、ビートは続いています。S&P500指数 は3月に終値での最高値を8回更新し(そのうちの1回は月末の最終日です)、年初来の最高値更新は22回となりました。このペースが続けば、今年の終値での最高値更新回数は、過去最多だった1995年の77回を超えるでしょう。マグニフィセント・セブンはついに「ギャング・オブ・フォー」に絞られ、値上がり銘柄数から値下がり銘柄数を引いた値は大きくなっており、マグニフィセント・セブンを除いた残りの493銘柄を合計すると年初来6.4%上昇となっています。

市場は3月も前進と上昇を続け(月間で3.10%上昇)、5100と5200の節目を一気に突破しました。終値での最高値は5254.35となり、取引時間中の最高値は5264.85を付けました。月間では5ヵ月連続の上昇となり(累計で25.29%上昇)、この間に合計時価総額は8兆9000億ドル増加しています(マイクロソフト<MSFT>、アップル<AAPL>、エヌビディア<NVDA>、アマゾン・ドット・コム<AMZN>の時価総額を合計すると9兆5000億ドルです)。政府の懐にもこの分け前が入ってくる見通しで、株価上昇のおかげで、2023年の税収は増加しています。

マグニフィセント・セブン銘柄(S&P500指数の時価総額に占める割合は29%)はS&P500指数の年初来上昇率10.16%の37%に寄与していますが、ここにきて「ギャング・オブ・フォー」という新たなグループが浮上してきました。エヌビディア、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズ<META>、アマゾン・ドット・コムの4銘柄は時価総額でS&P500指数の18%を占め、年初来上昇率の47%に寄与しています。残りの3銘柄は大きく水をあけられ、中でもテスラ<TSLA>は年初来で29.3%下落と、S&P500指数構成銘柄の中で最低のパフォーマンスとなっています。

年初来のパフォーマンスが2番目に低いのはボーイング<BA>で26.0%下落、アップルも10.9%下落しています。

3月の値上がり銘柄数は402銘柄、値下がり銘柄数は100銘柄となり、値上がり銘柄数が増加し、値下がり銘柄数を大幅に上回りました(2月は値上がり銘柄数が351銘柄、値下がり銘柄数が151銘柄)。セクター別では、3月は11セクターすべてが上昇しました。年初来でも値上がり銘柄数(369銘柄)が値下がり銘柄数(134銘柄)を大幅に上回り、11セクター中10セクターが上昇しています。2022年末からの上昇率は驚異の36.85%となっています(2023年は24.23%上昇)。もちろん、2022年は19.44%下落と低調だったため、2021年末から2年3ヵ月間の上昇率は10.24%となり、年初来上昇率の10.16%をやや上回っています。長期的に見ると何だか不思議な現象です。

しかし、重要な問いは変わりません。今どうすべきかです。1年3ヵ月の間に37%の上昇を遂げ、世界中でいくつかの「衝突」が起こり、大統領選挙の雲行きが怪しい今、時々考えるのは、足元での10.56%の年初来トータルリターンと、年末までに9ヵ月物の国債で3.9%の利回り(国債には州税や地方税はかかりません)を得られることを勘案すると、すでに今年は14.5%の利益を手にしており、残りの9ヵ月は遊んで暮らせるのではないかということです。しかし、市場は好調で、運用担当者は売買を続け、新たな投資資金が流入しています。投資のタイミングをうかがっている資金も多くありますが、市場に参入するためには流入することになります。企業業績は好調で(ただし、3週間後に筆者に尋ねて見てください)、金利はピーク水準を下回り(政府は短期金利を押し上げているようですが)、雇用は高水準を維持し(失業率は低水準です)、消費者の支出意欲は旺盛です(支出先は従来よりもやや厳選されていますが)。株価は上昇し続けており、米国はリスク/リターンの観点では潜在的な成長性が最高でないとしても、相対的に堅調な成長に向けて最高の態勢にあるように見受けられます。

市場から分割するわけではありませんが、チポトレ・メキシカン・グリル<CMG>は1対50の株式分割を実施する予定で、株価は現在の2900ドル付近(S&P500指数構成銘柄の中で4番目に高い株価)から58ドル(同393位)となります。これは、企業の取締役会に対し、株価を引き下げることで株主層を厚くするという考えを検討するきっかけになるかもしれません。現在、S&P500指数構成銘柄の株価の平均値は221.42ドルです。2013年末には78.12ドル、2003年末では40.07ドルでした。

4月には、2023年9月から続いていた政府機関の閉鎖という懸念がなくなっているはずですが、安心してください。大統領選前の2024年9月30日には次の期限がやってきます。また、4月もいつも通り、消費者物価指数(CPI)、卸売物価指数(PPI)、個人消費支出(PCE)物価指数、雇用関連指標(雇用者数、新規失業保険申請件数、求人件数)などが相場に影響を与えるとみられます。4月12日には、JPモルガン・チェース<JPM>、ステート・ストリート<STT>、ウェルズ・ファーゴ<WFC>などを皮切りに決算シーズンが始まります。第1四半期の業績は2023年第4四半期より若干改善が見込まれ(非公式予想では2%前後の増益が予想されています)、相場を大きく左右するとみられます。メディアの話題は引き続き、政治と選挙候補者の資金集めが中心になるでしょう。

懸念されるのは米連邦準備制度理事会(FRB)の動向で、月末(4月30日-5月1日)には米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合が開かれます。最近、懸念はそれほど強くありませんが、FOMCメンバーのコメントやドットチャートは市場に影響を及ぼします。市場とFRBは、年内に3回の利下げを予想しており(市場は利下げ開始を6月と予想しています)、高金利の長期化という話は完全に織り込まれています。

●インデックスの動き

○S&P500指数は上昇基調が続き、終値での史上最高値を複数回更新しました。同指数は5100と5200の水準を突破してそれを上回って推移し、3月に終値での最高値を8回更新して、年初来での最高値更新を22回としました(データが遡れる1929年以降で過去最多の1995年の77回を上回る勢い)。2023年は最高値の更新がなく、2022年も1回だけでした(最初の取引日の2022年1月3日)。S&P500指数は3月に3.10%上昇して、5254.35と史上最高値を更新して月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス3.22%)。2月は5096.27で終え、5.17%上昇(同プラス5.34%)、1月は4845.65で終え、1.59%の上昇(同プラス1.68%)でした。年初来の第1四半期では10.16%の上昇(同プラス10.56%)でした。2023年のリターンは24.23%の上昇で(同プラス26.29%)、2022年の19.44%下落を取り戻しました。過去1年のリターンは27.72%の上昇(同プラス29.73%)でした。

ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)も終値ベースで高値を3回更新し(高値は3万9807.36ドル、日中の高値は3万9889.03ドル)、高値で月を終えました。2月の高値更新は7回、1月の高値更新は7回(年初来では17回)、2023年12月の高値更新は7回でした。ダウ平均は3月に2.08%上昇して(同プラス2.21%)、3万9807.37ドルで月を終えました。2月は3万8996.39ドルで終え、2.22%の上昇(同プラス2.50%)、1月は3万8150.30ドルで終え、1.22%の上昇(同プラス1.31%)でした。年初来の第1四半期では5.62%の上昇(同6.14%)、過去1年のリターンは19.63%の上昇(同プラス22.18%)、2023年は13.70%の上昇(同プラス18.18%)、2022年は8.78%の下落(同マイナス6.86%)でした。

⇒S&P500指数の時価総額は、3月に1兆2900億ドル増加して(1月は2兆1050億ドル増加)43兆9660億ドルとなりました。2023年は7兆9060億ドルの増加、2022年は8兆2240億ドルの減少でした。

○3月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は、0.73%と2月の0.74%から低下し、年初来では0.75%となっています。なお、2023年通年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.42%)。

○3月の出来高は2月の前月比4%増加の後に、同5%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では12%減少しました。2024年3月までの12ヵ月間は前年同期比5%減少しています。2023年通年では前年比1%減で、2022年通年は同6%増でした。

○3月は1%以上変動した日数は20営業日中3日(上昇が2日、下落が1日)で、2%以上上昇した営業日はありませんでした。2月は1%以上変動した日数は20営業日中4日(上昇が3日、下落が1日)でした。年初来では、1%以上変動した日数は10日(上昇が7日、下落が3日)で、2%以上変動した日数は1日(上昇)でした。2023年通年は、1%以上変動した日数が250営業日中63日(上昇が37日、下落が26日)、2%以上変動した日数が2日(上昇が1日、下落が1日)でした。3月は20営業日中5日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上の変動はありませんでした。対して2月は1%以上の変動が20営業日中4日で、2%以上の変動はありませんでした。年初来では、13日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上の変動はありませんでした。2023年通年では1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が218日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日でした(4%以上の変動が4日、5%以上の変動が1日)。

過去の実績を見ると、3月は61.5%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.35%、下落した月の平均下落率は3.85%、全体の平均騰落率は0.59%の上昇となっています。2024年3月のS&P500指数は3.10%の上昇でした。

4月は64.6%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.30%、下落した月の平均下落率は3.97%、全体の平均騰落率は1.17%の下落(7月の1.70%下落に次ぐ)となっています。

今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは、2024年は4月30日-5月1日、6月11日-12日、7月30日-31日、9月17日-18日、11月6日-7日、12月17日-18日となっています。

※「ギャング・オブ・フォーが最高値更新を牽引 (2)」へ続く