パウエル議長はハト派サプライズを仕掛ける余地があるとの見方も

明日からFOMCが始まり、20日水曜日(日本時間21日未明)に結果が発表される。市場は先週の強いインフレ統計を受けて、利下げ期待を後退させている。ただ、一部からはパウエルFRB議長はハト派的な方向へサプライズを仕掛ける余地があるとの見方も出ている。

昨年末の12月FOMCで分かったことの1つは、パウエル議長がマイナス成長のサプライズに非常に敏感に反応することだという。当時、10月の失業率は速報段階で3.9%に上昇していたが、後に3.8%に下方修正された。その際、景気後退を見極めるためのサーム・ルールが間もなく発動されるのではとの観測も広まっていた。こうした要因が、12月FOMCで、パウエル議長が予想外のハト派サプライズを打ち出した一因であったと思われるという。サーム・ルールとは直近3カ月の失業率の平均値が過去12カ月の失業率の最低値よりも0.5%ポイント上昇した場合、景気後退期と判断する事。

パウエル議長は12月に間違いを犯したのだろうか?。少なくとも、完全雇用と物価安定というFRBの二大責務を考えれば、そうではないという。分析によれば、パウエル議長のハト派的な動きは約0.13%ポイントの利下げ効果をもたらしたという。

現在、失業率は再び3.9%に達し、企業景況感調査でも雇用や新規受注に対するセンチメントが悪化している。それにもかかわらず、米10年債利回りは1月末のFOMCから0.4%ポイント近く上昇。市場は1月と2月のインフレ上昇に反応している。対照的に5名以上のFOMC委員が1月のインフレ上昇をノイズと見なしていた。パウエル議長は、FOMCが利下げ前に求める追加的な信任は、必ずしもインフレが昨年末のよりも改善することを意味しないと述べていた。

市場は最近のインフレ指標に過剰反応し、一連の景況感指標のネガティブ・サプライズには過小反応しているという。パウエル議長が12月FOMCで軸足を移すきっかけとなったデータほどはまだ落ち込んではいないものの、少なくともパウエル議長やウィリアムズNY連銀総裁は、市場以上に景気を懸念しているのではないかと思われる。

そのため、パウエル議長は今週のFOMCでハト派的な方向へサプライズを仕掛ける余地があると指摘している。