米景気後退が緩やかだとしても、株価は下落の可能性が高いとの指摘

米株式市場は急速に上昇したが、米経済の景気後退が緩やかだった場合でも、株価は下落の可能性が高いとの指摘がエコノミストから出ている。市場ではソフトランディングを予想する声が高まっているが、その確率はまだ70%程度だという。こうした予測は、インフレの冷え込みを示すデータに基づいており、FRBや他の中銀が、経済が拡大を続けているにもかかわらず、すぐに利下げできることを示唆しているとしている。

来年に利下げが実施される可能性は高いが、世界経済は2年近くに渡る引き締めの影響をまだ十分に吸収していない。歴史的に米国の最初の利上げから景気後退が始まるまでの平均期間は約27カ月間だという。FRBとカナダ中銀は22年3月、ECBは同年7月に利上げを開始した。著しい景気後退のリスクは低下しているが、市場の価格設定は、それが著しい可能性を織り込んでいる。S&P500は11月初めから14%という驚異的な上昇を見せ、約25%上昇で今年を終えようとしている。菓子の中に焼き込まれているのは、企業収益の大幅な上昇期待という。

住宅ローン金利が頻繁にリセットされ、多くの消費者がすでに住宅ローンの返済額増加に対処している英国、カナダ、その他の国々に比べて、米経済は金利の影響を受けにくいと多くが考えている。しかし、米国の長期住宅ローンの構造には裏側があるという。利上げ前の22年時点で、米国の30年物の住宅ローンを借りている人たちは52年まで2.6%の住宅ローンで済むと喜んでいるが、その人たちに2.6%の住宅ローンを貸した金融機関はストレスを感じている。例え何百万もの米家計が低めの住宅ローン金利に固定されていたとしても、新しい車を買おうとか、新しく家を買おうとか、新しい家を建てようとか、新しい工場を建てようとか、そういう決断はすべて金利上昇に完全にさらされることになる。そのため、米国は他の国以上に金利上昇から守られていないという。

そのような中で、マイクロソフト<MSFT>やエヌビディア<NVDA>など、今年のS&P500をけん引した巨大IT以外の銘柄のバリュエーションのほうが遥かに合理的に見えると指摘。

同エコノミストは、過去10年以上に渡る米国株の圧倒的なパフォーマンスは反転の機が熟した可能性があると警鐘を鳴らしている。