為替週間見通し:ドルは下げ渋りか、日銀緩和維持で円売り持続の可能性

【今週の概況】
■ドル弱含み、米国金利の先安観強まる

今週のドル・円は弱含み。一時141円を下回った。日本銀行はマイナス金利の解除を急ぐ必要がないとの見方が強まり、12月11日の取引でリスク選好的なドル買いが優勢となった。一時146円59銭までドル高円安が進行したが、12-13日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合を控えてドル買いは次第に縮小した。FOMC会合では政策金利の据え置きが予想通り決定されたが、FOMC経済予測で来年の政策金利見通しが引き下げられ、利下げ回数の拡大が示されたほか、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長も「利下げのタイミングを協議した」と述べたことから、早期利下げ観測が急速に強まり、リスク回避的なドル売り・円買いが広がった。米国金利の先安観が強まり、日米金利差縮小の思惑も台頭したことから、14日の取引でドル・円は一時141円を割り込んだ。

15日のニューヨーク外為市場でドル・円は、142円45銭まで買われた後、一時141円43銭まで下落したが、押し目買いが入ったことで142円台に戻した。一部経済指標の悪化を意識してリスク回避のドル売りが優勢となったが、アトランタ連銀総裁が来年2回の利下げを想定し、早期利下げ観測は後退したことから、リスク回避のドル売りは縮小し、ドル・円は142円16銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:140円97銭-146円59銭。

【来週の見通し】
■ドルは下げ渋りか、日銀緩和維持で円売り持続の可能性

来週のドル・円は下げ渋りか。米連邦準備制度理事会(FRB)は12月12-13日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の据え置きを決定した。同時に公表した当局者による金利見通しは9月時点よりも低下し、今後の利下げに現実味が増している。パウエルFRB議長はこれまでの利上げ効果によりインフレは鎮静化に向かっていると認め、政策金利はピークとの認識を示した。

一方、日本銀行は12月18-19日開催の金融政策決定会合で現行の緩和政策を維持する公算。植田日銀総裁は先の国会質疑で「年末から来年にかけてチャレンジング」と答弁し、緩和政策の修正に向けた地ならしが市場の一部で期待されているようだ。ただし、市場が注目するマイナス金利の解除については来年1月以降となる可能性が高い。そのため、リスク選好的な米ドル買い・円売りが一段と縮小する可能性は低いとみられる。また、欧米長期金利の低下傾向で世界的な株高が見込まれ、短期的にリスク選好的な為替取引が拡大するとの見方が出ている。ユーロ、英ポンド、豪ドルなどに対する円売りが増えた場合、ドル・円の取引でもドル買い・円売りがやや強まる可能性は残されている。

【日本銀行金融政策決定会合】(18-19日開催予定)
日銀は12月18-19日に金融政策会合を開催し、現行の金融政策の維持を決定する見通し。今回の会合でマイナス金利の解除は想定されていない。植田総裁は記者会見で、来年に向け緩和政策修正には慎重とみられ、円売り材料になる可能性があろう。

【米・11月コアPCE価格指数】(22日発表予定)
12月22日発表の米11月コアPCE価格指数は前年比+3.4%と、前回の+3.5%から小幅低下が予想されている。鈍化傾向が維持されればドル売りに振れやすい。

予想レンジ:140円00銭-144円00銭

《FA》