新興市場見通し:下値模索の恐れ、米10年債利回りの上昇などが逆風

■米CPIなど控え模様眺めムード

今週の新興市場は反落。国内3連休や米消費者物価指数(CPI)などの週末にかけて発表される物価指標を前に模様眺めムードが強く、週末まで一進一退の展開だった。国内30年物国債や米3年物国債の入札結果で堅調な需要が確認され、株式市場の下落を誘発していた日米長期金利の上昇が一服したことが投資家心理を改善させた一方、積極的な売買は手控えられた。なお、今週の騰落率は、日経平均が+0.87%だったのに対し、マザーズ指数は-0.63%、東証グロース市場指数は-0.80%だった。

個別では、第1四半期の順調な決算に加えて株主優待制度の新設が好感されたサンクゼール<2937>が大幅に上昇。免疫生物<4570>は第1四半期経常損益の黒字転換で再び人気化した。業績予想を上方修正したIne<4933>も急伸。決算で流通取引総額(GMV)の増加や営業赤字幅の縮小が確認されたBASE<4477>は引き続き物色が向かった。決算以外では、小型風力発電機の実証実験を23年秋から開始すると発表したバルミューダ<6612>が大幅に上昇。一方、メイホーHD<7369>は前期上振れ着地に加えて今期増益見通しを発表し、場中に一時急伸したが、一部調査会社によるレポートを材料にそれまでに株価が急伸していた背景もあり、出尽くし感から売られた。上半期の営業赤字が拡大したモダリス<4883>は急落。ほか、エコナビスタ<5585>やLaboroAI<5586>などの直近の新規株式公開(IPO)銘柄が手仕舞い売りから大幅安となった。

■円安や個人の投資余力にも留意

来週の新興市場は軟調か。マザーズ指数は今週末にかけて200日移動平均線を下回った推移となり、同線下で上値と下値を切り下げる日が続いた。週足では今週末終値から3.5ポイントほど下に位置する52週移動平均線のサポートが期待されるが、これを下回ると、日足および週足ともに下値支持線が見当たらず、テクニカル的には下値模索の展開となりやすい。

また、今週末にかけて再び上昇してきている米長期金利も新興株の重しになる。注目された米7月消費者物価指数(CPI)は概ね市場予想に一致した一方、前年同月比で市場予想を小幅に下回り、米8月ミシガン大消費者調査の1年先期待インフレ率も予想に反して前月から低下するなど追加利上げ懸念を緩和させる内容も見られた。しかし、米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁の「まだやるべき仕事がある」としたタカ派発言や、米7月卸売物価指数(PPI)が予想を上回ったことなどが金利上昇につながった。米10年債利回りは11日に4.15%と、3日の4.18%に迫る水準にまで上昇している。3日の水準を上回ってくるようだと、新興株を敬遠する動きがさらに強まりそうで注意が必要だ。16日に公表される米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(7月分)などは注目材料となろう。

また、今週末にかけて1ドル=145円台目前にまで急速に進展した円安・ドル高を背景に、東証プライムの景気敏感株を主体とした物色が強まりそうな点も新興株にとっては上値抑制要因となりそうだ。加えて、4日申し込み時点の信用取引の買い残高(東京・名古屋2市場、制度・一般の合計)は2007年8月以来およそ16年ぶりの高水準を記録した。個人投資家の資金余力が限られていると考えられる点も懸念材料だ。

個別では、決算などを材料に見直し機運が高まっているBASE、サンクゼールは、株価の軟調な局面が長く続いていたため、一段と見直しの動きが強まるかに注目したい。

《FA》