為替週間見通し:ドルは底堅い値動きか、米雇用関連指標などが手掛かり材料に

【今週の概況】
■ドル下げ渋り、日銀緩和一部修正もリスク回避の円買い縮小

今週のドル・円は下げ渋り。7月25-26日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で政策金利を0.25ポイント引き上げることが予想通り決まったが、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が会見で金融政策は引き締めの領域にあることを再確認し、データ次第で、会合ごとに政策を決定していく方針を示したことから、9月利上げ観測は後退し、ドル売りが優勢となった。7月27日発表の米4-6月期国内総生産(GDP)速報値は市場予想を上回り、ドル買いが一時優勢となったが、「日本銀行は今回の金融政策決定会合で金融緩和策の修正について議論する」と報じられたことから、リスク回避の円買いが観測された。28日の東京市場では日銀による長短金利操作(YCC)の柔軟化を受けてリスク回避の円買いが再び優勢となり、ドル・円は一時138円07銭まで下落した。

28日のニューヨーク外為市場でドル・円は、139円16銭から141円18銭まで上昇した。
日銀植田総裁が「YCCの運用柔軟化は金融正常化へ歩みだす動きではない」との見方を伝えたこと、米国経済の持続的な成長やソフトランディングへの期待が広がり、リスク選好の米ドル買い・円売りが再び活発となった。ドル・円は141円17銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:138円07銭-141円81銭。

【来週の見通し】
■ドルは底堅い値動きか、米雇用関連指標などが手掛かり材料に

来週のドル・円は底堅い値動きか。米経済指標で複数の雇用関連統計が予定され、それらの内容を見極める展開となりそうだ。市場予想を上回る内容だった場合、連邦準備制度理事会(FRB)による追加利上げを意識したドル買いが見込まれる。FRBは25-26日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で0.25ポイントの利上げを決定。パウエルFRB議長はその後の記者会見で、今後の政策について「データ次第」とし、9月の次回会合での政策決定に手がかりを与えなかった。

足元で発表された米国の経済指標で、4-6月期国内総生産(GDP)速報値は1-3月期から伸びが加速した。来週は7月ISM製造業・非製造業や6月JOLTS求人件数、7月ADP雇用統計、7月雇用統計が注目される。強い内容が示された場合には、金融引き締め長期化の思惑から金利高・ドル高が見込まれる。一方、日銀は27-28日の日銀金融政策決定会合で、現行の金融緩和政策を一部修正し、金利上昇の抑制を目的に国債を買い入れる指し値オペの水準を従来の0.5%から1.0%に引き上げた。長短金利を操作するイールドカーブコントロール(YCC)政策の運用柔軟化を決めたが、金融緩和策の大幅な修正ではないため、リスク回避的なドル売り・円買いが急速に拡大する可能性は低いとみられる。

【米・7月ISM製造業景況指数】(8月1日発表予定)
8月1日発表の7月ISM製造業景況指数は46.8と、前月の46.0から改善が予想される。ただ、市場予想を明らかに下回った場合、製造業の減速を懸念したドル売り要因となる。

【米・7月雇用統計】(8月4日発表予定)
8月4日発表の米7月雇用統計は失業率が3.6%と横ばい、非農業部門雇用者数は前月比+18.0万人にとどまる見通し。平均時給が低調なら追加利上げ期待は後退し、米金利安・ドル安の要因になりそうだ。

予想レンジ:139円00銭-143円50銭。

《FA》