新興市場見通し:下げ止まり感を示唆、プライム銘柄からの主役交代に期待

■地合い悪化に連れ安

今週の新興市場は続落。需給悪化懸念で日経平均などが軟調に推移するなか、新興株も連れて下落する展開が続いた。また、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で政策当局者のタカ派姿勢が確認されたことや、米雇用関連指標の上振れを背景に米長期金利が上昇したことも重石になった。ほか、信用買い残が積み上がり、これまでの上昇相場の象徴的銘柄でもあったソシオネクスト<6526>が大口株主の売出決定を受けてストップ安比例配分となったことも一時的に個人投資家心理を悪化させた。なお、今週の騰落率は、日経平均が-2.41%だったのに対し、マザーズ指数は-3.52%、東証グロース市場指数は-3.27%だった。

個別では、時価総額上位銘柄を含め全般下落したものが目立ち、なかでもVTuber関連として人気が続いていたカバー<5253>が週間で-10.1%と大きく下落した。FPパートナー<7388>も-10.7%となり、比較的値持ちのよかった銘柄に利益確定売りが広がった。週間下落率ランキングでは地合いが悪化するなか足の速い資金が逃避したとみられ、W TOKYO<9159>、Arent<5254>、プロディライト<5580>、ブリッジコンサルティング<9225>、クラダシ<5884>など新規株式公開(IPO)から日の浅い銘柄が多く入った。一方、直近IPOではクオリプス<4894>が別次元の強い動きを見せたほか、免疫生物研究所<4570>、カルナバイオ<4572>などバイオ関連が週間上昇率ランキングの上位に入った。

■米長期金利の動向には要注意

来週の新興市場は強含みか。今週末に発表された米6月雇用統計は非農業部門雇用者数が20万9000人と市場予想(23万人)を下回ったが、水準としてはコロナ前を依然として上回り、平均時給については前年比+4.4%と予想(+4.2%)を上回り、5月(+4.3%)から加速した。予想を大幅に上振れたADP雇用リポートや低水準にとどまる新規失業保険申請件数などと合わせて考えても、逼迫した米労働市場の緩和ペースは非常に遅いといえる。米10年債利回りも4%超えを維持しており、来週も米連邦準備制度理事会(FRB)高官らの発言を受けた米金利の動向には注意が必要だろう。

一方、マザーズ指数は今週末、日経平均が値幅を伴った下落となったなか、朝安後は切り返してプラス圏で引けた。75日移動平均線を前にした「陽の寄り付き坊主」の示現で、目先の下げ止まり感が見られる。

日本銀行の内田副総裁の発言を受けて米追加利上げ観測の高まりと為替の円安が連動しにくくなっており、次の金融政策決定会合を通過するまでは為替の円高基調が続きやすいと想定される。その先には4-6月期決算が控えており、スケジュール的にも東証プライムの主力銘柄はいったんお休みモードに入りそうだ。この間、幕間繋ぎ物色で新興株に物色が向かうことを期待したい。

今週末から初値が持ち越されたグリッド<5582>を除けば来週はIPOがない。今週、多くの直近IPO銘柄が売り込まれたなか、高いテーマ性と成長性、今期黒字転換という好材料を併せ持ち、比較的チャートの形状を底堅く保っているABEJA<5574>のほか、グローバルメーカーとの取引関係があってかつ好業績と注目度も高いAeroEdge<7409>などは改めて物色が向かう展開が期待される。

《FA》