新興市場見通し:上値を試す展開に期待、IPOはアイデミーなど計5社

■出遅れ解消の動きが再燃、マザーズは年初来高値更新

今週の新興市場は大幅続伸。これまでの上昇相場における出遅れ感を解消する動きが再燃し、週初は大幅高で始まった。週半ばは衆議院解散を巡る思惑が強まるなか、再び外国人投資家が好む東証プライム市場の主力株が優勢な展開となり、新興株は軟調に推移。一方、米連邦公開市場委員会(FOMC)を無難に消化した後、岸田文雄首相が今国会会期中の衆院解散を否定したことが契機となり、週末は再び新興株を選好する動きが強まった。昼頃に日銀金融政策決定会合で政策の現状維持が伝わったことも支援材料となり、マザーズ指数はこの日だけで+4.5%と急伸した。なお、今週の騰落率は、日経平均が+4.47%だったのに対し、マザーズ指数は+7.45%、東証グロース市場指数は+6.91%だった。

個別では、全体的に買い優勢となったなか、時価総額上位20銘柄は全て週間で上昇した。ビジョナル<4194>+15.4%、M&A総研HD<9552>+22.0%、フリー<4478>+12.4%、カバー<5253>+16.6%、JTOWER<4485>+17.7%を筆頭に、時価総額上位7銘柄は週間で2ケタ台の上昇率となった。新規株式公開(IPO)が2銘柄あったが、約1カ月半ぶりのIPOでAIやDXといった高いテーマ性を有し、今期営業損益の黒字転換と業績の好調さも相まったABEJA<5574>は人気化し、上場2日目で初値を形成、その後も週末まで上値追いとなった。AI英語学習プラットフォームを手掛けるGlobee<5575>は公開価格の2.3倍で初値を付けた後は売りに押される場面もあったが、週末は地合いの好転も相まって急伸した。ほか、決算を材料にブレインズテクノロジー<4075>、GA technologies<3491>などが急伸し、ケアネット<2150>など株価下落の続いていた銘柄が特段の材料もなしに急速に買い戻される動きなども見られた。

■パウエル議長の議会証言に注目、出遅れの特に強い銘柄に注目

来週の新興市場は上値を試す展開か。先々週、5月第5週から出遅れ銘柄を物色する動きが見られており、今週も週初と週末にそうした動きが顕著に見られ、マザーズ指数は年初来高値を大きく更新してきている。新規株式公開(IPO)ラッシュ序盤の2銘柄が高い初値を付け、その後も堅調な株価推移を見せているこから、個人投資家の含み損益も改善が続いていると想定され、需給面も良好だろう。

一方、来週は21日にパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の下院での議会証言が予定されている。投資家は早くも利上げサイクルの終了を見込んでいるが、パウエル議長が必要以上に追加利上げを示唆すると、米国株主導で地合いが悪化する可能性があるため注意したい。

来週はIPOが合計5銘柄あるが、21日のシーユーシー<9158>を除けば吸収金額の大きい銘柄はない。その後控えている新規上場予定の銘柄の中にも吸収金額の大きい銘柄は多くないため、既存銘柄に対する換金売り圧力はさほど気にしなくてもよさそうだ。むしろ、IPO銘柄の高い初値形成が続けば、個人投資家の損益状況の改善を通じて、安値圏にある既存銘柄の物色などがより活発になりそうだ。なお、来週予定されている新規上場はシーユーシーのほか、オービーシステム<5576>、アイデミー<5577>、リアルゲイト<5532>、ARアドバンストテクノロジー<5578>、である。

個別では出遅れ解消の動き継続を想定し、ケアネット<2150>のほか、今週末に強い動きが見られたアイドマホールディングス<7373>など、依然として株価が安値圏にある銘柄に注目したい。

《FA》