国内債券投資の魅力が向上〜外国債券からの回帰も【フィリップ証券】

日銀による利上げ観測の高まり、米国の利下げ期待を巡る動きを背景とした為替の円高ドル安進展が日経平均株価の上値を重くしている。1/14に日銀の氷見野副総裁が横浜市で講演し、「来週(1/23-24)の金融政策決定会合では利上げを行うかどうか議論し、判断したいと思う。」と述べ、追加の利上げに向けた環境が次第に整いつつあるという認識を示した。続いて植田総裁も1/15、全国地方銀行協会が開いた会合で、同様に金融政策決定会合で「利上げを行うかどうか議論して判断する」と述べた。

総裁の発言を受けて15日の国内債券市場では幅広い年限の国債利回りが上昇した。10年物が1.255%(2011年4月以来)、2年物が0.700%(2008年10月以来)、5年物が0.890%(2009年4月以来)、20年物が2.015%(11年5月以来)、30年物が2.355%(09年8月以来)の利回りとなった。為替リスクのある外国債券で運用するよりも魅力的な水準まで十分に上昇してきている面もあり、国内機関投資家の債券運用に関して国内債券へ回帰する動きが加速する可能性がある。財務省の対外・対内証券投資によると、銀行は2024年に2兆6500億円の売り越し(2023年に13兆6162億円の買い越し)に転じたほか、生保も1兆6777億円の売り越しだった。

国内債券投資は満期までの保有を前提とすれば額面で償還されることから価格変動リスクを考える必要はないだろう。途中売却を考える場合でも、長期金利と短期金利のスプレッド(格差)が拡がっている場合、債券の残存期間が短くなれば利回りが低下しやすいことから、債券価格が上昇しやすい。これは「ローリング効果」と呼ばれる。残存期間が短くなるほど同じ利回り変化に対する価格感応度は小さくなるものの、日本国債の利回り曲線(横軸が残存期間、縦軸が利回り)が右肩上がりとなり、かつ、短期金利が緩やかな上昇にとどまるならば、中期から長期ゾーンへの国内債券投資がますます有利になると考えられる。国内機関投資家の債券運用が活発になることで銀行や保険会社の運用収益にも好影響が出やすく、銀行株や保険株への追い風にもなるだろう。

任天堂 <7974> が1/16、主力ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の後継機を2025年に発売すると発表。詳細は4/2配信予定の動画チャンネルで明らかにするとした。ニンテンドースイッチは2017年3月に発売後、シリーズ本体の累計販売台数が1億4604万台(24年9月末)に上った大ヒットゲーム機となった。任天堂のゲーム機への販売比率が高い部品メーカーであるホシデン <6804> やメガチップス <6875> は、PBR(株価純資産倍率)が0.8倍近辺と低水準にとどまっている。

■日経平均株価のBPS、PBR、ROE〜自社株買い増でBPS減とPBR・ROE上昇も

日経平均株価採用の225銘柄について1株純資産(BPS)を銘柄毎ウェートで加重平均した価格は1/15終値で2万7073円。日経平均株価終値はその1.42倍の3万8444円。株価純資産倍率(PBR)および株価水準は市場の需給によって変動するのに対し、純資産価格は純利益の最終赤字または自社株買いが無い限りは大幅減益でも減少せずに時間とともに着実な増加が見込まれる。

年間純利益の対純資産比率がROE(株主資本利益率)であり、ROEはPBRをPER(株価収益率)で割った値に等しい。利益水準にかかわらず、自社株買いを通じた純資産の減少によりROEが上昇する場合もPBR上昇をもたらすことが可能だ。自社株買い増加の加速がROEとPBRの推移に変化をもたらす可能性があるだろう。

【タイトル】

参考銘柄

久光製薬 <4530>

・1847年に久光仁平が佐賀県(現・鳥栖市)に「小松屋」を創業。医薬品事業を営む。「サロンパス」は80年以上の歴史を誇り世界シェア約7割。経皮薬物送達システムに基づく貼付剤の開発に注力。

・1/9発表の2025/2期9M(3‐11月)は、売上高が前年同期比8.2%増の1112億円、営業利益が同8.0%増の132億円。国内市場は医療用医薬品が減収も、一般用医薬品が「エスカップ」の伸びを受けて堅調。海外市場は医療用医薬品が同26%増収、一般用医薬品が13%増収。業績を牽引した。

・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比8.7%増の1540億円(従来計画1520億円)、営業利益を同36.7%増の180億円(同145億円)とした。国内で経皮吸収型の疼痛治療薬「ジクトルテープ」、海外で「サロンパス」や女性ホルモン製剤などが堅調に推移。継続的な原価低減や返品削減の取組みも奏功。18年6月高値と22年9月安値の各々を起点とする株価の「三角保ち合い」が注目される。

SMK <6798>

・1925年に池田平四郎が現在の東京都品川区豊町に池田無線電機製作所を創立。電気通信および電気機器等用部品の製造・販売を行う。コネクター等接続部品大手でスマホ向けが柱。

・10/29発表の2025/3期1H(4-9月)は、売上高が前年同期比2.3%増の236億円、営業利益が前年同期の▲1.77億円から1.08億円へ黒字転換。売上比率49%のCS(コネクション・システム)事業が同11%増収、同120%営業増益。SCI(センシング・コミュニケーション&インターフェース)事業は4.3%減収、営業赤字拡大。

・通期会社計画は、売上高が前期比3.2%増の480億円(従来計画500億円)へ下方修正の一方、営業利益を前期の▲12.43億円から2億円へ黒字転換(同▲2億円へ赤字幅縮小)への上方修正とした。米ラスベガスで開催されたテクノロジー国際見本市「CES 2025」で、用途が広く身近なコイン電池「CR2032」を代替する、交換不要な自立給電型コインバッテリーモジュールが現地で話題となった。

イオンフィナンシャルサービス <8570>

・1981年にジャスコ(現イオン <8267> )の子会社として設立。イオングループの金融サービス事業を営む。国内・リテール、国内・ソリューション、中華圏、メコン圏、マレー圏のセグメントで構成される。

・1/9発表の2025/2期9M(3-11月)は、営業収益が前年同期比9.3%増の3887億円、営業利益が同45.2%増の379億円。セグメント別営業利益では国際部門(中華圏、メコン圏、マレー圏)が同4%減の254億円も、国内部門(リテール、ソリューション)が前年同期▲5.6億円から122億円へ黒字転換。

・通期会社計画は、営業収益が前期比7.1%増の5200億円、営業利益が同9.8%増の550億円、年間配当が同横ばいの53円。同社株式はイオンが48.15%を保有する親子上場となる中で親会社によるTOB(株式公開買付)の可能性が考えられることに加え、1/16終値でPBR(株価純資産倍率)0.56倍、会社予想配配当利回り4.4%とバリュー株として魅力が増している。投資好機の面もあるだろう。

オリエントコーポレーション <8585>

・1954年に設立の「協同組合広島クーポン」が前身。みずほ銀行が48.6%、伊藤忠商事 <8001> が16.5%の株式を保有する。個品割賦、カード・融資、銀行保証、決済・保証、海外の各事業を営む。

・10/31発表の2025/3期1H(4-9月)は、営業収益が前年同期比10.0%増の1234億円、営業利益が同21.5%増の71.74億円。前期に東京センチュリーとその子会社2社を連結子会社化したことが増収に寄与。連結子会社化による費用増も、コスト抑制および貸倒関係費用の削減が利益面で貢献した。

・通期会社計画を下方修正。営業収益を前期比8.9%増の2495億円(従来計画2630億円)、営業利益を同25.6%減の120億円(同200億円)とした。年間配当は同横ばいの40円で据え置いた。海外子会社および24年3月に連結子会社化したオリコプロダクトファイナンス社の業績下振れによる。1/16終値でPBRが0.58倍、会社予想配当利回りが5.0%。上場維持に向けた流通株式比率引き上げも課題だ。

※執筆日 2025年1月17日

フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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