値下がり数が上回るなかM7が上昇を牽引 (1) 【シルバーブラットの「S&P500」月例レポート】

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●THE S&P 500 MARKET:2024年6月
個人的見解:2024年上半期のS&P500指数のトータルリターンはプラス15.29%を記録したが、エヌビディアを除くとプラス10.71%、マグニフィセント・セブン(M7)銘柄を除くとプラス6.27%

●インデックスの動き

○6月は年初来の上昇基調が持続し、S&P500指数は3.47%上昇(配当込みのトータルリターンはプラス3.59%)となりました(2023年は24.23%上昇、トータルリターンはプラス26.29%)。終値での最高値を月内に7回更新しましたが(年初来では31回、2023年は0回)、値下がり銘柄数(301銘柄)が値上がり銘柄数(201銘柄)を上回りました。5月は幅広く上昇して4.80%上昇(同プラス4.96%)、4月は限定的ながら幅広く下落して4.16%下落(同マイナス4.08%)でしたが、4月はもはや、良い兆候とは言えませんがそれほど懸念することのない、はるか遠い記憶となっています。

2024年第2四半期の3ヵ月間では3.92%上昇(同プラス4.28%)ですが、ここでも値下がり銘柄数(304銘柄)が値上がり銘柄数(199銘柄)を上回り、上位集中の不均衡な構造が浮き彫りになりました。2024年第1四半期が上位集中ではなかったとは言いませんが、値上がり銘柄数(369銘柄)が値下がり銘柄数(134銘柄)を大幅に上回り、全体で10.16%上昇(同プラス10.56%)でした。

年初来でみると、S&P500指数は14.48%上昇(同プラス15.29%)となり、年率換算すると31.18%上昇(同プラス33.05%)に相当します。年初来では値上がり銘柄数(301銘柄)が値下がり銘柄数(200銘柄)を上回っています(5月末時点では値上がり銘柄数が312銘柄、値下がり銘柄数が189銘柄でした)。

6月は19営業日中12営業日で上昇し(5月は22営業日中14営業日で上昇)、年初来では124営業日中69営業日で上昇しています。6月は11セクター中5セクターが上昇しました(5月は10セクターが上昇)。出来高は前月比で1%増(営業日数調整後)、前年同月比では4%減でした。

○S&P500指数の時価総額は6月に1兆5460億ドル増加(5月は2兆630億ドル増加)して、45兆8430億ドルとなりました。年初来では5兆8040億ドル増加しました。2023年は7兆9060億ドルの増加、2022年は8兆2240億ドルの減少でした。

⇒ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は6月に最高値を更新せず、1.12%上昇して(配当込みのトータルリターンはプラス1.23%)、3万9118.86ドルで月を終えました。5月は2.30%上昇して(同プラス2.58%)して、3万8686.32ドルで月を終えました。2024年第2四半期の3ヵ月間の騰落率は1.73%下落(同マイナス1.27%)、年初来では3.79%上昇(同プラス4.79%)、過去1年では13.67%上昇(同プラス16.02%)となっています。2023年は13.70%の上昇(同プラス16.18%)、2022年は8.78%の下落(同マイナス6.86%)でした。

○6月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は、0.7684%と5月の0.7687%からわずかに低下し、年初来では0.83%となっています。なお、2023年通年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.42%)。

○6月の出来高は、5月の前月比4%増加の後に、同1%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では4%減少となりました。2024年6月までの12ヵ月間では前年同期比6%減少しています。2023年通年では前年比1%減で、2022年通年では同6%増でした。

○6月は1%以上変動した日数は19営業日中1日(上昇が1日、下落はなし)で、2%以上変動した営業日はありませんでした。5月は1%以上変動した日数は22営業日中3日(上昇が3日、下落はなし)でした。年初来では、1%以上変動した日数は21日(上昇が14日、下落が7日)で、2%以上変動した日数は1日(上昇)でした。2023年通年は、1%以上変動した日数が250営業日中63日(上昇が37日、下落が26日)、2%以上変動した日数が2日(上昇が1日、下落が1日)でした。

6月は19営業日中4日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日はありませんでした。対して5月は1%以上の変動が22営業日中4日で、2%以上変動した日はありませんでした。年初来では、33日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日数は2日ありました。2023年通年では1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が218日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日でした(4%以上の変動が4日、5%以上の変動が1日)。

過去の実績を見ると、6月は56.3%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.89%、下落した月の平均下落率は3.30%、全体の平均騰落率は0.75%の上昇となっています。2024年6月のS&P500指数は3.47%の上昇でした。

7月は60.4%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.94%、下落した月の平均下落率は3.24%、全体の平均騰落率は1.70%の上昇となっています。

今後の米連邦公開市場委員会FOMCのスケジュールは、2024年は7月30日-31日、9月17日-18日、11月6日-7日、12月17日-18日、2025年は1月28日-29日となっています。

●主なポイント

○6月の市場は3.47%上昇(配当込みのトータルリターンはプラス3.59%)となり、5月の上昇基調(4.80%上昇、同プラス4.96%)が持続しました。終値での最高値を月内に7回更新し、終値での最高値は5487.03を付け、6月の最終営業日には取引時間中の最高値5523.64を記録し、一気に5400台を突破して5500の大台に乗せましたが、終値が5500台に到達することはありませんでした。

2024年第2四半期では3.92%上昇(同プラス4.28%)となり、2024年第1四半期の10.16%上昇(同プラス10.56%)、2023年第4四半期の11.24%上昇(同プラス11.69%)に続いて3四半期連続の上昇となりました。2023年第3四半期は3.65%下落(同マイナス3.27%)でした。年初来では14.48%上昇(同プラス15.29%)となり、年率換算すると31.18%上昇(同プラス33.05%)に相当します。

S&P500指数の動きは引き続き政策金利が長期間にわたって高止まりすることを受け入れており、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ(0.25%)が9月に実施されるとの予想(確率は64%)が維持されています。一方で、先物市場は年内に2回目の利下げがあることを織り込んだ動きを見せています(とはいえ、先物にはヘッジやポジション調整の動きも反映されることも広く指摘されています)。要するに、米国経済と雇用(個人消費だけでなく、税収を通じて、財政赤字が続く政府支出を大きく下支えします)が底堅さを維持している限り、市場はFRBが思うように政策運営を進めていくことに異論はないようです。

マグニフィセント・セブン銘柄に関して言えば(テスラ<TSLA>は年初来で株価が20.4%下落していますが、アップル<AAPL>は6月に9.6%という急上昇を演じ、年初来で9.4%上昇に返り咲きました)、これら7銘柄の市場への影響力は依然として大きく、S&P500指数の年初来上昇率に占める割合は59%となっています。また、7銘柄の6月の平均騰落率はプラス8.7%となり、S&P500指数(平均騰落率はプラス0.5%)をアウトパフォームしました。運用担当者もこれら7銘柄への投資を継続していますが、グループとしてではなく、各銘柄を個別に見極めています。

○6月の主なデータ

⇒S&P500指数は6月も常勝街道を突き進み(2024年に入って月間で上昇したのは6回中5回目)、唯一下落した4月(4.16%下落)ははるか遠い記憶となっています(無かったことにできるという人もいるかもしれません)。終値での最高値を7回更新し、最高値更新は年初来で31回となりました。終値での最高値は5487.03、取引時間中の最高値は5523.64を記録し、一気に5400台を突破して5500の大台に乗せました。5月の最高値更新は2回、4月は下落して5000を割り込み、下値を試す場面もありました。4月の広範にわたる下落(4.16%下落)と5月の大幅上昇(4.80%上昇)を経て、6月も力強く上昇(3.47%上昇)しました。3月までは5ヵ月連続で上昇し(累計で25.29%上昇)、それ以前は3ヵ月連続で下落(累計で8.61%下落)、さらにその前は5ヵ月連続で上昇(累計で15.59%上昇)していました。こうした指数の動きは相場(と景気に対する認識)が大きく揺れ動いていたことを反映しています。

6月は19営業日のうち12営業日で上昇しましたが(5月は22営業日のうち14営業日で上昇)、値下がり銘柄数(301銘柄)が値上がり銘柄数(201銘柄)を上回る展開となりました。5月は値上がり銘柄数が327銘柄、値下がり銘柄数が176銘柄でした。出来高は前月比で1%増、前年同月比では4%減でした。

→(市場が上昇したにもかかわらず)6月は11セクターのうち5セクターが上昇しました。5月は10セクターが上昇、4月は1セクターのみでした。6月のパフォーマンスが最高となったのは前月に続いて情報技術で、9.29%上昇しました(5月は9.95%上昇、年初来では27.79%上昇、2021年末比では42.08%上昇)。パフォーマンスが最低だったのは公益事業で、5.75%下落しました(年初来では7.58%上昇、2021年末比では4.78%下落)。

⇒S&P500指数は6月に3.47%上昇して5460.48(月中に付けた終値での最高値は5487.03)で取引を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス3.59%)。5月は4.80%上昇(同プラス4.96%)の5277.51、4月は4.16%下落(同マイナス4.08%)の5035.69で月を終えました。2024年第2四半期の3ヵ月間では3.92%上昇(同プラス4.28%)、年初来では14.48%上昇(同プラス15.29%)、過去1年では22.70%上昇(同プラス24.56%)となりました。2023年通年は24.23%上昇(同プラス26.29%)、2022年通年は19.44%下落(同マイナス18.11%)でした。

→6月にS&P500指数は終値での過去最高値を7回更新しました。5月は2回、4月は0回、3月は8回、2月も8回、1月は6回でした。年初来での最高値更新回数は31回となりました。なお、2023年の最高値更新回数は0回、2022年は1回、2021年は70回でした(過去最高は1995年の77回)。

→コロナ危機前の2020年2月19日の高値からは61.28%上昇(同プラス72.91%)となっています。

※「値下がり数が上回るなかM7が上昇を牽引 (2)」へ続く