中国半導体株と香港不動産株~今狙うべきは?【フィリップ証券】

中国半導体国策ファンドへの期待とSMICへの懸念

中国政府が24日、半導体の新たな国策ファンド「国家集成電路産業投資基金三期」を設立。財政省を筆頭株主として株主には国有企業が並び、資本金は最大約7兆4000億円。AI(人工知能)に不可欠な半導体を巡って米国が対中包囲網を強化する中で、中国は独自の供給網の構築を急いで対抗の構えだ。

過去の第2期までのファンドでは半導体受託生産大手の中芯国際集成電路製造[SMIC](981香港)やメモリー大手の長江存儲科技[YMTC]などに投資してきた。27日の香港株式市場でもSMICのほか華虹半導体[フアホン・セミコンダクター](1347香港)が大幅高となるなど、期待も大きいようだ。

SMICは新たな国策ファンドからのバックアップも期待されるものの、株式投資の対象としては懸念すべき点が大きい。9日発表の2024年1-3月期決算は、華為技術(ファーウェイ)関連スマホ向けの貢献で売上高が同20%増の17億ドルと伸長も、純利益が前年同期比69%減の7179万ドル。新工場の建設などで生産能力が拡大したことで製造コストが上がり、研究開発支出の増加も収益を圧迫。中国向け比率が82%まで高まり、ハイテク分野の米中対立の影響が浮き彫りとなっている。

半導体ファウンドリ(受託生産)事業で、台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>や韓国サムスン電子の業績がAI半導体向けの伸びを受けて改善しているのと対照的だ。先端技術に関する製造設備の中国への輸出規制が強化される中では、中国政府によるファンドを通じた支援が収益面でマイナスに作用する可能性も考えられよう。

中国不動産株の反発局面で狙うべき銘柄は

中国経済の最大の不安定要因とされていた中国の不動産開発会社の株価が反発局面にある。何立峰副首相は17日、不動産不況を巡る解決策の一環として国内で売れ残っている住宅を買い取る方針を示した。地方政府が買い取った後に安価な住宅に転換して提供し、買い取り資金は中央銀行である中国人民銀行が最大3000億元の再融資制度を創設するとした。

投資の観点からは、香港の4大不動産会社である恒基兆業地産[ヘンダーソン・ランド・デベロップメント](12香港)、新鴻基地産発展[サンフンカイ・プロパティーズ](16香港)、新世界発展[ニューワールド・デベロップメント](17香港)、長江実業集団[CKアセット・ホールディングス](1113香港)が持続的安定性の点から注目される。

歴史を支えてきた伝統的な財閥の強さに加え、広東省・香港・マカオの経済協力を強化する「大湾区・グレーターベイエリア」構想に期待がかかる。総面積は約5万6000平方キロメートルと日本の九州を上回り、域内総生産(GDP)が約250兆円相当額に上る。運輸関連のインフラ整備の大型事業として香港と深センを結ぶ「港深西部鉄道」の敷設計画は、香港政府によれば今年半ばまでに鉄道計画と実現可能性調査などの検討を完了させる見通しだ。4社の中では、2023年6月期の年間配当が前期比63%減配となった新世界発展を除外し、24年12月通期予想で配当利回りが6~7%台、配当性向が50%未満、予想PER(株価収益率)が10倍前後の恒基兆業地産、新鴻基地産発展の2社が、インカムゲイン狙い・バリュー投資で妙味があろう。

【タイトル】

フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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