日米オラクルはどちらも有望な投資対象の可能性【フィリップ証券】

■米オラクルと生成AI向けデータ処理~DBの重要性から同社クラウド基盤普及

データベース(DB)大手米オラクル<ORCL>が企業のAI(人工知能)活用に伴うクラウドコンピューティングサービスの需要増を受けて好調だ。ITシステムにおけるDBの重要性およびDB分野でのオラクルへの信頼感から、統合基幹業務システム(ERP)などのソフトウエアをDBサーバーを備えた同社のクラウド基盤を使って提供する動きが拡大中。アプリケーション(ソフトウエア)と基盤(インフラ)に係るクラウドサービスの売上比率は四半期ごとに上昇しており、利益率を高める原動力となっている。

同社は4/18、今後10年間で日本国内のデータセンターに80億ドルを投資すると発表。自国データを国内で管理する「データ主義」に配慮しつつ政府や企業の需要を取り込む狙いで、クラウドサービスの拡大による更なる成長が見込まれよう。

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銘柄概要
・1977年設立のソフトウェア企業。主にデータベース管理システム(DBMS)を企業向けに提供。サーバーとストレージ販売・サポートのハードウェア事業、クラウドサービスに係るサービス事業を営む。

・3/11発表の2024/5期3Q(12-2月)は、売上高が前年同期比7.1%増の132.80億USD、非GAAPの調整後EPSが同15.6%増の1.41USD。契約済・売上未計上の残存履行義務(RPO)が同29%増の800億USD。クラウド関連収入が同25%増の51億USD(内、インフラが49%増、アプリケーションが14%増)と成長。

・2024/5期4Q(3-5月)会社計画は、調整後EPSが前年同期比3.0-0.6%減の1.62-1.66USD。生成AI(人工知能)向けのデータ処理増加に伴いクラウド基盤を使う企業の需要が高まる見通し。

■日本オラクル <4716> について

生成AIの急速な普及に伴い、利用企業の間では基盤となる大規模言語モデルの学習や運用に使うクラウドサービスのニーズが高まっている。米オラクルが10年間で約1兆2000億円、アマゾン・ドット・コム<AMZN>のAWSが5年間で約2兆2600億円、マイクロソフト<MSFT>が2年間で約4400億円と、米クラウド大手が今年4月、軒並み巨額の日本国内でのデータセンター投資を発表している。

また、2025年は日本政府が行政サービス用クラウドサービスを整備してその上で地方自治体向け標準システムを稼働させることに伴う移行期限目標年とされている。政府が基準を設けた品質・性能を備える「ガバメントクラウド」を提供する事業者として名乗りを上げているのがアマゾン、アルファベット<GOOGL>、マイクロソフト、オラクル、さくらインターネット <3778> の5社である。外資4社は既にガバメントクラウドの要件を満たしているのに対し、さくらインターネットのクラウドは、将来的に満たすことを条件として指定事業者とされている点に違いがある。

銘柄概要
・RDB(リレーショナル・データベース)管理ソフト世界首位の米オラクル日本法人として1985年設立。オラクル開発製品の日本における販売・付随サービス提供を主業務とし、独自の研究開発活動は行わない。

・3/19発表の2024/5期9M(6-2月)は、売上高が前年同期比8.4%増の1768億円、営業利益が同9.7%増の577億円。クラウドサービスとライセンスサポートを含む「クラウドサービス&ライセンスサポート」の売上高が同11.7%増の1173億円。特にクラウドサービスが同36%増(355億円)と成長顕著。

・通期会社計画は売上高が前期比2.0-6.0%増(前期実績2269億円)、EPS(1株当たり当期純利益)が406~408円(同:405.98円)、年間配当未定(同:162円)。生成AI(人工知能)など新テクノロジーに対する企業のIT投資の追い風に加え、最近大きな社会問題となっているSNS上のネット広告詐欺(アドフラウド)対策ツールへの需要の高まりは同社のデータクラウド「Moat」にとって追い風となろう。

フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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